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ライフスタイル探検隊
「語り合うマーケティング」が未来を拓く
発刊記念セッション

 

2019年10月31日に弊社ドリームインスティテュート代表取締役社長 上野和夫とライフスタイル探検隊プロジェクトリーダー望月祐佳の共著【ライフスタイル探検隊「語り合うマーケティング」が未来を拓く】の発刊を記念致しまして、本郷3丁目にあるドリームインスティテュートのカフェ&ラーニングスタジオにて発刊記念セッションを開催致しました!

 これまでにない新しいマーケティング手法、および人材育成手法を独自の観点から執筆した本書を
ぜひ多くの方に知っていただきたいという熱い思いで開催しましたイベントは、有名大学教授から大手企業の経営陣、多くのメディアの方々にもご来場いただき、ワクワク感と笑い溢れる素敵なセッションとなり、大盛況のうちに終了致しました。

 今回は、その発刊記念<ライフスタイル探検隊セッション>の全容をご紹介致します!

 イベントのオープニングは20年来、マインド・ストレッチ・セッションの講師としてご登壇いただいている一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻教授 楠木建氏の記念講演『すべては好き嫌いから始まる』からスタートしました。


~すべては「好き嫌い」から始まる~
  一橋大学ビジネススクール 楠木建教授

■「競争戦略」とは「違い」をつくること

 「良し悪し」と「好き嫌い」。これはどちらも価値基準なんですが、「良し悪し」は、社会的にコンセンサスがとれている普遍的な価値基準のことを指します。たとえば、法律がそうです。また、多様な文化圏がある中で、ほとんど「時間に遅れてはいけない」というコンセンサスが成立しています。これは、良し悪しであると言えます。 一方、局所的な、コンセンサスが確立していない価値基準があります。これを好き嫌いと言います。 例えば、かつ丼より天丼が好き。これは完全な個人の好き嫌いです。全く普遍性はありません。つまり、普遍性の次元で、「良し悪し」と「好き嫌い」は対極にあるということです。

 仕事においては、『もっと好き嫌いを重視した方が良いんじゃないか』ということを、本日申し上げたいと思います。

 私は、競争戦略という分野で仕事をしていますが、この視点でなぜそう思うのか申し上げたいと思います。 非常に理屈は単純で「違いがあるから選べる」一言でいうと、これが競争戦略の本質で、「違いには違いがある」というのがポイントです。 2つの違いの作り方があります。
ひとつはOE(Operational Effectiveness)という、どちらが“Better”かという違いです。AさんよりBさんの方が速く走れる、というような、同じモノサシで競って、違いを見出す方法です。 もうひとつの「違い」は、SP(Strategic Positioning)という“戦略的位置取り”です。 Different、つまりモノサシがない状態です。人間でいうなら、男と女の違い。優劣や勝ち負けで語るものではなく、違いが違いとしてあるだけです。

 さて、この“違いの違い”ですが、なぜ違いを区別することが大切なのでしょうか。なぜならば、競争戦略とは、「競争相手との違いをつくる」Differentだからです。他社よりもBetterであったとしても、それは戦略ではありません。つまり、足が速いことも大切ですが、それ以前に他の人と違うゴールに向かって走るようなDifferentの方がもっと重要なのです。

■「違い」は良し悪しではなく好き嫌い

  戦略的な位置取り、“Different”をファッションビジネスの例で話しますと、もともと年に2回コレクションを行い、次のシーズンに売れるものを予想してつくるというやり方がファッション業界のスタンダードでした。これは、当たれば大きいけれど外れるというリスクもあります。

 ZARAの創業者であるアマンシオ・オルテガさんは、「なぜ外れるのか」と考え、「予想するから外すんだ。始めから売れているものを作れば売れるに違いない」という考えにたどり着きました。全くDifferentなんですね。これがのちに“ファストファッション”という新しいファッションカテゴリーをつくったわけです。

 一方、ユニクロは、ライフウェア、つまり洋服は生活部品であるという考え方です。GAPのようなカジュアルウエアではない。部品なので生活シーンに合わせた機能的な提案をし、毎年更新していく。全く新しいポジションを作ったと言えます。商品でいうと、ヒートテックは、素材から東レと3年もの期間を費やして開発されたものです。これまた立ち位置が全くDifferentであります。

 ポイントは、ZARAとユニクロは相互にDifferentなポジションを持っている。つまり、それぞれに戦略があるということです。こういう風に戦略の本質を考える時に、商売をスポーツに例えようとする人がいますが、基本的に間違いです。根本的に違うのは、スポーツの場合、誰かが勝てば誰かが負けます。 商売事は一つの業界に常に複数の勝者があるのです。なぜかというと、相互にDifferentだからです。どちらかが優れているということではないのです。今のところは両者とも勝者です。

 ここからが今日の本題です。

 ОEが良し悪しであるのに対して、戦略的な意思決定というのは、本来、あっさり言えば好き嫌いの問題だということです。良し悪しでは割り切れないんですね。つまり、私が専門にしている競争戦略というのは、論理的に好き嫌いと非常に親和性が高いわけです。 どちらが良い選択だろうと考える人に戦略はできません。

 

■センスは「好き嫌い」から生まれる

  戦略を創る経営者の意思決定主体から説明すると、「経営者」と「担当者」は根本的に違います。
社長だとか代表権があるとか言うことではなく、仕事に対する構えの事です。 経営の仕事の本質は担当がないということです。経営者とは、ある商売の塊をまるごと相手にする人にほかならないのです。 担当者が、その役割に特化して業務を遂行することにおいては、その分野のスキルが重要なのは言うまでもありません。ところが、経営者になると、もはやセンスとしか言いようのないものが勝負になるということです。

 スキルとセンスは全く違うものです。

 スキルであれば、例えばTOEICの点数など、「見せる、示せる、測れる」という特定のモノサシで測れます。ところが、センスは「私は商売のセンスがある」と言ったところで、そう簡単には示すことはできません。

 同じように、スキルはモノサシがあるからこそ、今のスキルレベルを認識することで改善できます。練習した分だけ上達できるというのもスキルの特徴でしょう。 しかし、センスの場合は、モノサシがないからこそ自分のレベルを認識しづらく、センスがない人がやればやるほど、ますますひどくなることもあります。 「プレゼンのスキルは最高なのに、話が全くつまらない人」これは、センスがないわけです。

 仕事になると、基本的にスキルが優先し、センスがないがしろにされる傾向があるとはっきりいえると思います。 これが今、ビッグデータの周りで起きているわけで、スキルと勘違いし、分析する人が出てきます。

 つまり、センスは、「好き嫌い」から生まれるということが言いたいわけです。

 インセンティブ(誘因)とドライブ(動因)。この区別をはっきりつけることが大切だと思います。スキルであれば、インセンティブは有効です。スキルはやれば必ず向上します。そうするとますますインセンティブが効いて、好循環となります。

 センスは、ちょっと違うということで、少し古い話になりますが、リナックスというオープンソースソフトウェアをやり始めたリーナス・トーバルズさん。この人は、当時のマイクロソフトなど巨大な富を独占しようとする者に反旗を翻していた勇気ある人と思われていますが、回顧録を読むと、実は、単にオープンソースの方が楽しいと思っていたからやっただけのようです。つまりは「好き嫌い」です。

 原田泳幸さん。以前マクドナルドを率いていましたが、とにかくクライシスが大好きな人です。これがないと仕事がつまらない。「さあ大変、もうだめだ、やばいぞ」これが最高に楽しいという人。こういう人だから、いい仕事があの局面でできるわけです。

 ユニクロの柳井さんは、でかいスケールの商売が心の底から好きです。とにかくニッチにとどまっていられない。完全に個人の好き嫌いでしかありませんが、柳井さんの好き嫌いがあったからこそ、ユニクロは、ライフウエアというコンセプトと、戦略ストーリーを作るセンスになっていることは間違いないと思います。

 同じ業界でも、ユナイテッドアローズ創業者の重松さんは、柳井さんとは全然違います。非常に脱力系でありまして、とにかく運が良かっただけとおっしゃいます。こういう方だから、あのような御商売ができたということでしょう。

 番外編ですが、サントリーの新浪さんに聞いたら、「嫌いな奴に嫌われるのが大好き」とおっしゃっていました。こういう人だからできることがあるわけです。クロスボーダのМ&Aを日本人がやるのは並大抵ではありません。

 つまり、外の力を加えたら、生まれるものも生まれないというのがセンスでありまして、飛び道具はありません。 いつの時代も旬の飛び道具が取りざたされるわけで、最近はさしずめ、AI、ビッグデータが飛び道具扱いされています。もちろん、AIもビッグデータも大切で非常に有能ですが、そこから得られるのは、無限の相関です。ありとあらゆる相関は見つかりますが、因果の洞察は含まれていません。情報がいっぱいあって、相関関係が見えて、というのは、「良し悪し」みたいな話です。
ところが、因果関係についての洞察がないと何も生まれないわけで、それは情報より「注意」が生み出すものです。注意は因果関係の産物で、一人一人の「好き嫌い」にかかっています。こういった意味合いで、ビッグデータは大切だが、実際の商売に役立つものは、注意というようなものではないかということです。

 それが、私が上野さんたちの本『ライフスタイル探検「 語り合うマーケティング」が未来を拓く』の帯に書いた「データには相関しかない。因果関係の洞察がなければデータは使えない。ビッグデータの時代だからこそ「現場の探検」が意味を持つ」ということであります。

 

■仕事こそ「好き嫌い」が大切

 もう少し個人のレベルで考えてみたいと思います。

 趣味と仕事の違いは何でしょうか?趣味は自分のための行いなのに対して、仕事は自分以外の誰かの役に立たなければ対価を貰えないという意味ではっきりとした違いがあります。

 ちなみに私の趣味はロックバンドで、時々ライブもやっていますが、お客様に音を届けたいという気持ちよりも、自分たちが楽しくて演奏しているだけです。聞いている人が多い方が気持ちいいということです。次のライブが近々ありますので、ぜひどうぞ。こうやって誘っているが、誰も来ないんです。理由は明確で、なぜなら「価値がない」からです。趣味だからです。

 こう言うと、「趣味は好き嫌いでやればいいし、仕事はお金をもらうんだから好き嫌いの話ではない」という方がいますが、仕事こそ好き嫌いが大切だということです。 ただし、好きだけで成功できるほど仕事は甘いものではありません。他の人が普通にできることをやっても、プロの世界では通用しません。「余人をもって替え難い」という状態にならないと仕事とは言えないと思います。

 では、余人をもって替え難い仕事をするためにはどうしたらいいのでしょうか。「良さ」を追求する場合は、昇進や報酬などのインセンティブの獲得を目指して努力し、スキルが向上し、更なるインセンティブを目指してまた努力をする、この循環が大切です。

 ところが、私は振り返ってみても、努力してうまくいった仕事はただのひとつもありませんでした。これは極論を言ってしまうと、努力が必要な時点で “向いていない”ということかもしれません。

 そこで私が行きついた仕事の原則は、無努力主義です。言い換えるならば努力の娯楽化です。
起点にあるのは「動因」、その人がこれが好きであるということです。傍からは努力しているように見えて、本人はその意識がない。大好きだから努力が苦でなくなっている状態ともいえます。そうして能力が上がり、成果も出て、ますますその仕事が好きになっていくという循環が生まれていくのです。余人をもって替え難いということになり、最強の好循環が生まれます。好きこそものの上手なれということになります。

 「頑張る」のではなく、「凝る」という状態です。この状態をいかにつくるかが、仕事の成果に大きく左右すると考えています。

 

■「好き嫌い」が全ての動因となる

 昨今の「働き方改革」についても、もう少し考えた方が良いのでないかと思っています。

 いま世の中は、ブラック企業だホワイト企業だと騒がれる傾向にありますが、私はこの言い方が嫌いです。もちろん、ブラック企業は良くありません。ただ、本当に悪いのは普遍的価値基準に沿って悪いとされるもの。労働基準法に違反しているならば、犯罪として立件すれば良いだけです。

 ところが昨今のブラック・ホワイトというのは、たとえば仕事がキツイ、厳しい、いやになったなど認知によって騒がれているものも多く含まれているように思います。つまり、それは働く人たちの「好き嫌い」に依存しているということ。そんなに単純に「この企業はクロ、あの企業はシロ」と決めつけられるものではないんです。批判の対象になっているものは、認知の問題であります。

 たとえば、「休みはないのにプレッシャーばかり多くて、うちの会社はブラック企業だ」と叫んでいる人々がいます。一方で、「明日からモザンビークに行って、プロジェクトが終わるまで帰ってくるな」と言われて、「嫌いじゃない」と言って働いている人々もいるわけです。この違いはどこにあるのでしょうか。

 それは、その仕事が好きで、プレッシャーも分かった上で働いているかどうかです。「そもそもそういう仕事ですよね」という理解があり、好きでやっているからこそだと思います。

 「好き」は人によって違います。だからこそ、企業を白と黒の二色に分けるという考え方はやめた方が良いのではないでしょうか。ピンクだってブルーだって良いのではないでしょうか。色々な種類、色々なカラー、好き嫌いがあるだけです。 人によって好きが違うように、企業もカラフルなバリエーションがあっていいし、それぞれ好きな色の人同志が集まった方が幸せですよね。

 また、仕事は成果がすべてですが、好きでやっている人たちは、その成果を出す過程でも報われています。結局、好きな仕事をやっている限り、「負け」はありません。これが「良し悪し」でやっていると「負け」は「負け」です。プロセスで報われるというのが、負けはないということです。

 更に言えば、どんなにお金を積んでも阪神ファンを巨人ファンに強制することができないように、「好きになること」は命令できません。

 また一方で、多様性を高めなければならないというお題に悩んでいらっしゃる経営者や人事の方も多いのだと聞いています。ただ、この課題は前提において間違っているのではないでしょうか。 今の組織に多様性がないという風に思い込んでいるのだとしたら、全くそんなことはないと申し上げたいです。

 「多様性はいまここに既にある」。何が多様性かといえば、やはりそれは「好き嫌い」です。 当然、社員ひとりひとりの好き嫌いや、その結果としての得意不得意は違います。これは男女の差よりもずっと多様なのではないでしょうか。一人ひとりが自己の「好き嫌い」を表明することを大切にして、それを受け入れ、活用する経営が大事なのです。

 「コレクトネス」これが正しいのか、を気にする世の中になったと思います。 例えば、選択的夫婦別性反対論者の理屈を聞くと、単なる好みの問題を強制的に良し悪しにしています。一方、別姓でなければならない論者も、逆の意味で、良し悪しに強制翻訳しています。

 しかし経営判断は「良し悪し」ではなく「好き嫌い」です。一人ひとりが自分の好き嫌いを自覚し、お互いの好き嫌いを尊重することで世の中が回っていきます。また、強い組織とは、個人の好き嫌いをインクルージョンできている組織です。

 ツイッターで、10年来読んだ本のコメントを述べていたのですが、色々なことを言ってくる人々がいます。 「どっちでもいいじゃないか、好きにしろ」と思い、DMMでクローズドなコミュニケーションの場を始めました。非常に楽です。好きな人しか入ってこないわけですから。 人の好き嫌いは尊重しなければいけません。自分の好き嫌いを押し付けるなど、もってのほかということです。

  結論としましては、「全ては好き嫌いから始まる」ということでした。


 続いて、『ライフスタイル探検隊「語り合うマーケティング」が未来を拓く』の著者2名が登壇し、これまでのライフスタイル探検隊の歩みから現在の活動、そしてこれからのライフスタイル探検隊の未来ビジョンについて語りました。

 
オープニングは「すべては好き嫌いから始まる」記念講演!(楠木建教授)  

 

ライフスタイル探検隊の未来ビジョンについて
熱い想いを語る(上野和夫)
ライフスタイル探検隊の活動について紹介
(望月祐佳さん)

 

 
様々な企業・組織からライフスタイル探検隊セッションの体験者も応援にかけつけ、 セッションでの気づきや発見、自分の仕事の仕方の変化等の思いを率直に語ってくださいました。

 

ライフスタイル探検隊の応援団である経営者やコンサルタントの皆様から暖かい激励のメッセージをいただきました!
(左上から 株式会社三越伊勢丹ホールディングス 特別顧問 石塚邦雄氏、アイング株式会社
代表取締役副社長 飯嶋寿光氏、ライフシフトジャパン株式会社 取締役 豊田義博氏、コーンフェリー&ヘイコンサルティンググループ チーフコンサルタント 綱島邦夫氏)
その他にも各界の企業や協会を代表する方々にお越しいただきました。
(プラス株式会社 常務取締役 ファニチャーカンパニープレジデント 北尾知道氏、株式会社日本能率協会マネジメントセンター 代表取締役社長 張士洛氏、一般社団法人日本百貨店協会 専務理事 山崎茂樹氏、日本生活協同組合連合会 代表理事専務 嶋田裕之氏)

 

 
ライフスタイル探検隊メンバーの乾杯の挨拶から懇親会がスタート!(駒ヶ峯誉さん)  

 

たくさんのマスコミの皆様にもご来場いただき、様々な視点から取材いただきました。
(日本テレビ、朝日新聞社、毎日新聞社、日本経済新聞社、繊研新聞社、 コープソリューション新聞社、株式会社日経BP『日経ビジネス』、 株式会社日本能率協会マネジメントセンター『Learning Design』 、株式会社商業界『月刊販売革新』、株式会社ストアーズ社『週刊デパートニューズ』『月刊ストアーズレポート』、 株式会社クロス『家電Biz』)

 

全体セッションでは、ライフスタイル探検隊がどんな思いで始まったか、何をしているのか、どんな活動をしていきたいと思っているかということについて、プロジェクトリーダーの望月祐佳さんから語っていただきました。探検隊メンバーのF1層・M1層からも若者の思いやコミュニティ活動、自分たちが思い描く未来について、たくさんの発言がありました。
ライフスタイル探検隊の未来ビジョンや、探検隊メンバーの発言から、今後のくらし、ライフスタイル、ビジネスなどの変化の兆しや次世代の息吹を感じとった経営者やメディアの皆様からは、たくさんの質問や激励のメッセージをいただきました。

発刊記念セッションにご参加いただいた皆様 本当にありがとうございました!